2008529

川崎市長  阿部 孝夫 様

トナミ運輸倉庫増築に関する住民の会

                           代表   渡辺

高津区溝口5-11-22

公開質問状

 川崎市は、条例に従い、今こそ「事実の公表」に踏み切るべきです 

 

 トナミ運輸(株)が高津区溝口の社宅と独身寮を取り壊し、大倉庫棟を建設する計画を発表したのは昨年4月でした。
 私たち地域住民にとっては、目の前に幅108m、高さ20m、奥行27mという巨大な壁が出現するばかりでなく、屋上に100台を超す開放型大駐車場を設置するという計画に驚かされました。この地域はすでに市内ワースト4に数えられる大気汚染高濃度地区なのです。
 それから1年以上が経過しました。この間、トナミ運輸は屋上駐車場計画の見直しを求める地域住民の切実な声に耳を傾けることなく、一切住民との話し合いを拒否したまま、現在、本工事を強行しております。住民がやむにやまれず申請した「調停」も実現しないまま長期間引き延ばされ続け、私たちの怒りと苛立ちはつのるばかりです。
 以下に私たちの見解を述べ、阿部市長のお考えを伺いたく、ご回答をお願い致します。

【T】住民には厳しく、業者には甘い市の一貫した姿勢がトナミ運輸の増長を招いたとは考えませんか?

 「調停」申請から8ヶ月、トナミ運輸が調停に応じる意志のないことは明確なのに、川崎市がいまだに条例の定めに沿った「事実の公表」、「調停勧告の打切」の手続きを行わないのは異常の極みです。

トナミ運輸(株)の住民敵視と条例および行政指導に対する軽視・無視の姿勢は一貫しています。さかのぼれば、担当部局がその時々のトナミ運輸の傲慢な態度に対して本来行政としてとるべき毅然とした指導を行わず、これを放置してきた積み重ねが現在の異常事態を招いた原因といわざるを得ません。

(1)昨年822日、市議会まちづくり委員会は私たちが提出した請願の審査を行いました。計画内容とトナミ運輸の話し合い拒否姿勢に対する批判が相次ぎ、「住民と誠意をもって話し合いに応じるよう強く要請していく」との局長答弁を受け、全会一致趣旨採択となりました。
 議会議決を受けてのまちづくり・環境両局長の指導文書は、トナミ運輸本社からまたもや代理人弁護士に回された上、指導内容は受け入れられませんでした。
 にもかかわらず、市は総合調整条例の「承認」をおろしてしまったのです。

【質問1】少なくとも住民との話し合いの場を持つことの確約なしには承認をおろせない、と迫るくらいの指導はできなかったのでしょうか?

(2)行政は、委員会局長答弁が実を結ばなかった言い訳として、トナミ運輸が承認通知書を取りに来たとき、話し合いに応じるよう指導すると約束しました。しかしトナミ運輸それを取りに来なかったのです。建築確認を民間機関に申請する場合、条例の承認通知書を添付する義務がないことを承知した上で、市役所に出向くような無駄なコストはかけないという考えなのでしょう。

市はこんなことは総合調整条例施行後初めてと嘆いて見せただけで、挙句の果ては先方の要求に応じて通知書を送付してやったのです。開いた口が塞がらないとはこのことです。

  【質問2】市は、何故取りに来させる強力な指導が出来なかったのですか?

【質問3】市議会議決にもとづく住民との約束を反故にした弁明も謝罪もありません。責任をどう感じておられるのでしょうか?

【質問4】市の条例など歯牙にもかけないトナミ運輸のような悪質な企業に対しては、総合調整条例は無力である、やむをえないとお考えですか?

【U】「調停」申請から8ヶ月も放置されているのは異常です。直ちに「事実の公表」を実行すべきです。

(1)話し合いのテーブルにさえ着こうとしないトナミ運輸の対応に、私たちはやむなく昨年の928日、紛争調整条例に基づく「調停」を申請しました。ところが、それから実に8ヶ月も経つというのに、いまだに棚ざらしという異常事態が続いています。

 これは、市の送付する「調停受諾勧告書」や「公表通知書」を受け取ったトナミ運輸が、膨大な質問を含んだ文書を送りつけ、それに対する行政の返答に対して再び再質問や意見を出すというキャッチボールが延々と続いているためです。この間、申請者である住民は蚊帳の外に置かれたままなのです。

【質問5】トナミ運輸の対応は、始めから調停に応じる気がないのに、建築確認取得、工事着工の時間稼ぎしているとは考えないのですか?

【質問6】住民の事業者への要望書提出、説明報告書に対する市への意見書提出などには、提出期限の定めがあり、厳守を求められます。トナミ運輸に対するきわめて寛大な対応と比べて公正を欠くとは思いませんか?  

(2)市は1212日になってようやく「調停受諾拒否に正当な理由なし」と判断し、トナミ運輸に弁明の機会を与える「公表通知書」を送付しました。その後さらに時間を費やしてトナミ運輸との文書のやり取りを続け、2008226日、市は3度目となる意見陳述を求める文書を送付しました。これ迄はすべての文書で回答期限日を明記してきたのに、今回は記載なしでした。

  【質問7】今回に限って回答期限を記載しなかった理由は何故ですか?

 

(3)これまでの経緯をみれば、期限指定なしでは何時まで待ってもトナミ運輸からの返事は届かないことは容易に想像できたことです。案の定返事のないまま、226日の文書からは3ヶ月、1212日の公表通知書からは5ヶ月以上が経過してしまいました。市が期限指定なしの不完全な文書を送付したのは、「事実の公表」を諦めたからなのでは、と推測したくもなります。

【質問8】市は何もしないでこのまま何時までも返事を待ち続けるのですか? 市としては「何時までに決着をつける」考えなのか明らかにして下さい。

(4)紛争調整条例第22条に「正当な理由なく調停を拒否した場合は、その旨を公表することができる」と規定されています。いったんは事実公表の決断をしてトナミ運輸に通知したのに実行しないで放置している理由がわかりません。公表せぬまま放置することは条例違反であり、悪質事業者の「やり得」を助長することになるだけに許されないはずです。私たちは、条例を守らぬ悪質事業者への社会的制裁として、「事実の公表」の実行を求めています。「公表」も、川崎市のホームページに載せるなど、広く市民の目に触れる方法を考えるべきと申し入れしています。

【質問9】市として「事実の公表」をする気が無くなったのですか? そうであるなら、その理由を明確にして下さい。

【質問10】公表せぬまま放置することは市自らが条例違反を犯すことになりませんか?

(5)現在横浜地方裁判所で、トナミ運輸と川崎市との間で情報公開にかかわる「行政処分取消請求事件」が係争中です。調停申請の当事者である住民が、市長の調停受託勧告に対するトナミ運輸の質問(という名の引き伸ばしのためのいちゃもん)の内容を知る権利のあることは自明のことです。それを知られたくないために市を訴えるという態度に彼らの道理のなさが如実に現れています。

しかし、この裁判と「事実の公表」問題とは直接リンクするものではありません。裁判がらみで「公表」を躊躇することがあってはなりません。あくまでも条例に基づき「事実の公表」を実行すべきです。

  【質問11】市が「事実の公表」の実行に踏み切らないのは、この裁判との関連  を考慮してのことですか?

(6)トナミ運輸は、こうして住民要望、市議会議決、行政指導に背をむける一方、工事は着々と進めています。こうした事態は悪質事業者の「やり得」を助長し、悪しき前例を残すことになるだけに許せません。

他に類を見ないこれらトナミ運輸の異常ずくめの対応は、本来行政としてとるべき毅然とした指導がなされないまま放置してきた結果でもあり条例の存在意義が否定されたに等しい憂うべき事態です。私たちは市の責任は極めて重大と考えております。

  【質問12】現状は、条例違反が黙認され放置されている事態とは考えませんか?   まちづくり条例、とりわけ紛争調整条例が空洞化、形骸化しているとは考えませ   んか?

【質問13】最後に再度うかがいます。市として、直ちに「事実の公表」に踏み切るべきと考えますがいかがですか?

                                  以 上

上記各項目について真摯にご検討の上、612日までに回答いただきたく、申し入れるものです。なお回答は質問項目に沿って逐条的に、簡潔にお願いいたします。                                  

元へもどる