2013年2月18日 川崎市議会議長 大島 明 様 斜面地建築物制限条例の更なる改善を求める陳情 まちづくり・環境運動川崎市民連絡会 はじめに. 川崎で地下室マンション建設が本格的に浮上したのは、1998年に遡ります。当時高津区最大の緑地であった末長久本山に、地上3階地下8階などの異様な建築計画が出現し、激しい反対運動と世論の注目を集めました。 以来15年、2004年の規制条例制定後も地下室マンション建設は止まりませんでした。このたび市議会において、これを本格的に規制する条例改正が成立しようとしていることは感慨深いものがあります。これも、貴議会が2011年7月、久本の自然と住環境を守る会と当会が提出した2つの陳情を趣旨採択いただき、行政が条例改正に踏み出す後押しをしていただいたからこそと、改めて感謝の意を表します。 改正によって「意図的盛土による高さ規制の脱法」という地下室マンション問題の核心を禁止したことを評価し支持します。 また、「4メートルの緩衝空地」の設定については、「緩衝空地内において、原則、擁壁の設置を制限」する点では横浜市を上回る規制となり、歓迎します。 1.以上を評価したうえで、今回の条例改正によってもなお地下室マンションの根絶には距離があることを訴え、引き続き改善に向けての議会のご努力をお願いするものです。 (1)改正によって「盛土型地下室マンション」は禁止されますが、斜面地を切土してそこにマンション地下階部分をはめ込む「切土型地下室マンション」の規制はできません。 さる9月議会の代表質問で、自民党、共産党がこの問題を質したのに対し、まちづくり局長は「切土による地下室マンションについては、このような問題(周辺に圧迫感などを与え、周辺の住環境と調和しない)が生じるものではない」と答弁されています。 これは明らかに誤った認識です。現在麻生区上麻生で進められている地下室マンション計画は、第一種低層住居専用地域(高さ10m制限)に、9層、高さ実質27m、幅106mの大マンション計画です。 高低差25m以上の崖地の上部に尾根を越える形で建築されるのですから、その圧迫感は半端ではありません。戸建て住宅が殆どで一部に小規模マンションが混在する緑豊かな周辺住環境とは著しく不調和です。 (2)「切土型」と並んであるいはそれと複合して「階段状」も「周辺に圧迫感などを与え、周辺の住環境と調和しない」地下室マンション手法です。 前記麻生区上麻生計画がその典型ですが、A棟とB棟を斜面上にずらして建築し、各々が高さ制限等に合致しているとすることで高層・巨大マンションを可能としています。しかも、A棟B棟を1棟の建築物扱いしているのですから、市民感覚からすれば理解を超えています。 景観法や川崎市景観条例では、建築基準法の規定とは別に、「見つけの高さ」(高さは、周囲の接する地盤のうち最も低い位置からの見付けの高さとする)、「見つけの幅」(最も長く見える見付けの壁面の長さ)といった概念を導入しています。 また世田谷区や鎌倉市では「接地高低差規制」(建物が地面と接する最も高い位置と最も低い位置の高低差を規制する)を条例化して建築基準法では規制できない景観破壊の建築物に対処しています。 川崎市も、自治体の創意工夫で可能となるこれら先進事例を参考に、「切土型」や「階段状」の地下室マンション規制へ努力していただきたいと思います。 これだけ大問題になっているのですから、「一定の周知期間の必要性」は不要と考えます。駆け込み申請を許さないため、条例改正議決・公布とあわせ一日でも早く施行すべきと考えます。 元々「遅きに失した感は否めない」(9月議会自民党代表質問)今回の開始着手です。改正のきっかけを作った当事者が改正の恩恵にあずかれないというのはいかにも理不尽です。「法律・条例の不遡及の原則」を持ち出すことでは、行政の「不作為の罪」を問う悲痛な叫びを説得できるものではありません。あらゆる手段を尽くして住民の被害軽減に努めるべきと考えます。 横浜の制限条例は「地下室建築物の延べ床面積を増加させることとなる盛土を行ってはならない。」と疑問の余地のない明快さで「意図的盛土」を禁止しています。 将来、1.で述べた新たな規制実現のための再改正の際には、誰でもが理解でき誤解の余地のない明快な条文となるよう抜本改正していただくようお願いします。 【陳情項目】 2.条例改正によっても救済されず、完成すれば「条例不適格」となる建設中の地下室マンションと施行前を狙った賭けこみを許さないため可能なあらゆる手段を動員していただきたいこと。 3.きわめて分かりにくい条例案文を将来の再改正の際に改めていただきたいこと。 以上 |